一昨日は曇りのち晴れ一時雨。昨日は晴れ時々曇り。今朝は曇り。
❶東国原英夫氏(64)、宮崎県知事選出馬へhttps://t.co/CbX6hL67tv
— 月影隠輝 (@f3eOrVMXRo0zZgC) 2022年7月26日
⇦まさか、水道橋博士の参院選当選に影響を受けたのではあるまい?
❷秋葉原無差別殺傷事件の元派遣社員・加藤智大(39)死刑囚、26日午前に刑執行。https://t.co/q14DVMRP9c
⇦拡大一途の派遣社会が招いた悲劇のようにも?
❸夏花 pic.twitter.com/Cr99oDKGZn
(以上、昨日撮影。順に、ネメシア、松葉牡丹、アメリカンブルー&メランポジウムの花々)
はじめに
音楽著作権侵害形態には様々のものがあるが、今回は所謂「パクリ」と謂われる侵害形態に絞って考えてみた。
この騒動の決着は民事裁判で行われるが、民事は刑事と違ってマスコミで取り上げられることが少ないだけでなく、もし和解で決着が付きようものなら、当事者側が開陳しない限り、ブラックボックス化(法廷でのやり取りの大部分が書面交換)してしまう。
それでは、なぜ開陳が必要であるかと言うと、これまでパクリか否かの判断が、個別具体的に違う場合が多いからである。判例も、その判断基準に❶類似性(楽理的な同一性)、❷依拠性を掲げているが、その当て嵌めについては、個々の事例により異なるからである。
そこで、これまでのパクリ騒動の結末事例を3つ選んで、少し考えてみた。
ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件
まず、日本で大ヒットした「ムード歌謡曲」について、音楽著作権侵害に該当するか否かの紛争になった事例がある。
それは、1963年に発表した、作詞・作曲/鈴木道明の歌謡曲「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」事件である。
その曲は次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=6TTwlINmyw8
この曲は1963年から、日野てる子(オリジナル)、和田弘とマヒナスターズ、西田佐知子、ブレンダ・リー、越路吹雪、青江三奈等の有名歌手により唄われていた。
ところが、この曲に対し、アメリカの作曲家・ハリー・ウオーレン(1933年作曲)側から、1934年発表の映画「ムーラン・ルージュ」の主題歌「夢破れし並木道(Bouleverd of Broken Dreams )」)に類似しているということで、著作権侵害による訴え提起がなされた。
その曲は次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=LAW-BUtTmyc
THE BOULEVARD OF BROKEN DREAMS - JACINTHA - YouTube
そう言われて聴くと、確かに、メロディが似ているようである。
東京地裁の判断は、音楽は「旋律、和声、リズムや形式の4要素からなる」とし、総合的に判断して❶類似性を認められないとした。
東京高裁は、ハリー・ウオーレン側の控訴を棄却した。
最高裁は、「偶然の暗合」(音楽の専門家や愛好家の一部だけに知られていただけで、音楽の専門家や愛好家なら誰もが知っていたほど著名とは言えない。)を理由に、著作権侵害を認めなかった(1978年9月7日確定)。類似性も否定した。https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/243/053243_hanrei.pdf
(雑感)
依拠性はともかくとして、類似性まで即否定するのは疑問なしとしない。ただ、この程度の類似性は往々にしてよくあることで、結論としては類似性を否定せざるを得ないように思われる。
なお、一般的には、類似性が否定されれば依拠性まで判断する必要がないはずなのに、裁判所がそこまで判断したのは、ある意味事件の重大性を勘案したか、又は下級裁判所に今後生起する事件の裁判規範を提示するためだったのであろうか?
パープル・タウン事件
次に、1980年7月21日に発売した、「八神純子」が歌唱している「パープル・タウン」(作詞/三浦徳子、作曲/八神純子、編曲/大村雅朗。日本航空JALPaK「I LOVE NEWYORK キャンペーン」CMソング使用曲。60万枚を超える大ヒット曲。)の盗作問題である。
その曲は次のとおりである(ただし、原曲でないようにも?)。
https://www.youtube.com/watch?v=zHt5kARkMP0
この曲に対して、アメリカのシンガーソングライター「Ray Kennedy(レイ・ケネディ)」側から、同人が作曲した「You Oughta Know By Now 」(邦題名/ロンリー・ガイ。1980年)に、曲の前半部分が酷似しているという音楽著作権侵害の問題提起がなされた。
その曲は次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=YFDEhOxEh-g
https://www.youtube.com/watch?v=njS-WPF_LUs
これに対し、八神純子さん側は、Kennedyから借用のOkを取っていたが、手違いが生じたと主張した。
この盗作問題について、 Kennedy側から訴え提起がなされたようであるが、結局のところ、「八神純子」さん側がカヴァーリング扱いにすることで最終決着した。つまり、作曲/八神純子、Ray Kennedy、Jack Conrad、Dabid Conrad4名の共作として、曲名は「パープル・タウン~You Oughta Know By Now ~」とした。
その扱いは次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=F7GqupbnSb8
https://www.youtube.com/watch?v=QU1HW23n7pM
なお、次の記事にこの盗作騒動の詳細はあるが、訴え提起についての記述はない。
NY留学帰りの八神純子が巻き込まれたヒット曲の“盗作騒動”|日刊ゲンダイDIGITAL
(雑感)
八神純子さん側は作曲者の許諾を得ていたとしていたが、その後手違いを認めているので、双方話し合う余地は十分あった事案である。訴え提起がなされなくても、和解で終わる可能性は十分ある。ただ、訴訟の場合は公式文書なので今後の紛争予防には確実である。それにしても、八神純子さんを加えた計4名の共作にしたのは、理想的な和解であろうか。
記念樹事件
最後は、1998年7月に訴え提起がなされた「卒業ソングの名曲」に関わる記念樹事件である。
その詳細は次の過去記事に書いている。
音楽著作権侵害問題考~卒業ソングの名曲「記念樹」が聞かれない(1)~ - 諦観ブログ日記 (hatenablog.com)(2020年2月5日)
音楽著作権侵害問題考~卒業ソングの名曲「記念樹」が聞かれない(2)~ - 諦観ブログ日記(2020年2月12日)
この事件は、第1審と第2審が真逆の判断となり、結局、最高裁は第2審を支持した事案である。この点、専門家等の中には第1審を擁護する意見もあり、難しい案件ではあった。
そして、この法的決着により「記念樹」は公式的に歌うことができなくなった。
(参考)
❶ 卒業ソング「記念樹」は、次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=foS55_yNy-4
❷ ブリヂストンタイヤCMソング「どこまでもゆこう」は、次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=bZLXkVeaMTY
https://www.youtube.com/watch?v=glQ4EBzIe6k
❸ 「記念樹」&「どこまでも行こう」との比較は、次のとおりである。
https://www.youtube.com/watch?v=cSqUFggCHlE
(雑感)
いずれにしろ、この事件の背景には、日本音楽著作権協会(JASRAC)の運営の在り方に対する双方の対立があったようである。思うに、子供の為にも、卒業ソングの名曲「記念樹」を編曲扱いにして残して欲しかったものである。
おわりに
以上、音楽著作権侵害(パクリ)騒動3事例についてみて来たが、記念樹事件を除き、裁判資料がほとんど見付けられなかった。そのため、記事を書くのに難儀し、ネット情報だけでは間違いもあるかも知れない。
その上で、パープル・タウン事件は双方和解で決着し、作曲者が4名の共作としたのは、まさにWIN-WINであった。
これに対し、ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件と記念樹事件は、まさにガチの勝負となった。前者は終始訴えた側が敗訴し、後者は訴えた側が1審勝訴、2審敗訴と勝敗の帰趨がどうなるか分からない程、盗作か否かの判断が割れた。しかし、結局は最高裁は訴えた側の主張を認めた。
パープル・タウン事件について、前半部分に似たようなメロディがあっても日本では許容させる風土があったように思われる。この点、外国では深刻に受け止められていたのであろうか。ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件についても然りである。
思うに、両者とも大ヒットして人口に膾炙するとともに、又当然、作曲者側がウハウハと大金を儲けていたこともあって盗作問題が提起されたのであろう。
まぁ~、ヒットしなければ外国人に知られることもなく、かつ「ウハウハ」と大金儲けすることもないから、当然盗作騒動が起きる確率はほとんどないだろう。
記念樹事件については、これまでの日本歌謡界の慣行として、通常なら盗作騒動は起こらなかったはずであったのに、残念なことである。なぜなら、演歌やポップス等を調査してみると、似たような曲は枚挙にいとまがないからである。それも、盗作疑惑のありそうな曲で大ヒットし、ウハウハと大金を儲けているのに盗作騒動は起こっていないのである。
この点。記念樹事件は、日本音楽著作権協会(JASRAC)の運営の在り方に対する深刻な対立がもたらした悲劇でなかろうか。