諦観ブログ日記

ー Que Será, Será(ケセラセラ)ー

盗作疑惑の裁判と音楽界の影響力~米国のソウルミュージック盗作疑惑裁判2例(メモ)~

 昨日は曇り時々雨。今朝は晴れ。

(本日早朝目撃の山並み)

 

 

はじめに

 

 1984年4月1日、父親から拳銃で射殺されて亡くなった「マーヴィン・ゲイ」(44歳)は、1970年代に活躍した米国のソウルミュージシャン(※ 1)であった。彼の後世への影響は計り知れなく、ヒットアップアーティストから模倣される等したそうである。

 そんなこともあってか、リズムや曲想等に影響を受けたミュージシャンが数多くいたようである。

※ 1ソウルミュージックとは、「リズムアンドブルースを主体にゴスペル音楽やジャズなどが融合した、現代アメリカ黒人の大衆音楽」を言う(精選版 日本国語大辞典)。

 

 今回裁判沙汰の相手方となった、英国人歌手「エド・シーラン」や米国人歌手「ロビン・シック」等も、「マーヴィン・ゲイ」の影響を受けたミュージシャンの一人であったのであろう。

 ところが、これらミュージシャンの曲が大ヒットして売れに売れすぎたためか、マーヴィンゲイの遺族から盗作疑惑が投げ掛けられ、裁判に至った向きもあろうか。

 

 そこで、ネット資料も数少ない中で、エド・シーランの「シンキング・アウト・ラウド」と、ロビン・シックの「ブラード・ラインズ」の2事例について、それらの裁判結果をメモとして紹介する。

 

シンキング・アウト・ラウド事件(盗作疑惑裁判メモ)

 

 2017年、故マーヴィン・ゲイMarvin Gaye遺族は、

  ❶  英国のシンガーソングライター「エド・シーランEd Sheeran」が歌唱している、次の「シンキング・アウト・ラウドThinking Out Loud」(YouTube再生回数37億。2016年米国グラミー賞最優秀楽曲賞受賞の大ヒット曲。2014年)を、

Ed Sheeran - Thinking Out Loud (Official Music Video) - YouTube

 

  ❷  米国の男性ソウル歌手・マーヴィン・ゲイ歌唱している、次の「レッツ・ゲット・イット・オンLet's Get It On」(YouTube再生回数1.3億。1973年)Marvin Gaye - Let's Get It On - YouTubehttps://www.youtube.com/watch?v=ScTyVPhCqPE(ただし、Darryl Aamistead歌唱分)のコード進行、特定部分のメロディやリズムに、

顕著な類似点があるとして訴え提起をしていた。

 

 しかし、この裁判において、2023年5月4日、米国連邦地裁陪審著作権の侵害がないとして、盗作を認めず訴えを退けた。

英歌手エド・シーランさん勝訴 名曲盗作疑惑―米:時事ドットコム

エド・シーランさん名曲、盗作にあらず :朝日新聞デジタル

 エド・シーランは、この裁判に負けたら音楽界を去る発言をしていたそうである。

 他方、遺族はこの評決を不服として、2023年6月1日控訴状を提出。

 

ブラード・ラインズ事件(同メモ)

 

 これに先立ち、故マーヴィン・ゲイの遺族は、

  ❶  2013年の大ヒット曲「ブラード・ラインズ~今夜はヘイ・ヘイ・ヘイBlurred Lines)」(Robin Thicke - Blurred Lines ft. T.I., Pharrell - YouTubeYouTube再生回数8.8億)を、

  ❷  1977年のヒット曲「黒い夜Got too Give it up)」(MARVIN GAYE - GOT TO GIVE IT UP  1977 - YouTubeYouTube再生回数2334万)の盗作として、

米国の男性歌手「ロビン・シックRobin Thicke)」&同「ファレル・ウイリアムPharrell Williams)」を訴えていた。

 

 この裁判は、2015年3月10日、ロサンゼルス連邦地裁の陪審団が、数か所コピーしたものと認定して、約5億7000万円の損害賠償金(著作権使用料の半分)支払いを認める評決を下した。

 2018年3月、連邦控訴裁判所も一審を支持。

 この裁判に負けた「ロビン・シック」は、「酷い先例を作ることになってしまう」と不満を吐露していた。

 

おわりに

 

 以上、ソウルミュージックの名曲に関する盗作疑惑裁判事例を簡単に紹介してきたが、ソウル自体がメロディよりも、コード進行やリズムに重きが置かれるためか、似かよった曲が生まれやすい性質を有するものと思える。

 そんな中、マーヴィン・ゲイの影響を受けたミュージシャンの作品も多少似かよったものができるのもやむを得ないような気がする。

 

 上記「はじめ」に述べたように、今回の裁判沙汰は大ヒットしてあまりにも売れ過ぎたために、マーヴィン・ゲイの遺族から著作権侵害の訴訟提起がなされたとみる向きもありそう。

 例えば、ブラード・ラインズ盗作疑惑裁判において、遺族は約5億7000万円の損害賠償金を手中にし、かつ今後の著作権料収入を折半することになったので、その利得は膨大である。

 思うに、依拠性や高度の類似性がない限り、音楽文化のより良き向上発展のために、多少のことは目をつぶる必要もあろうか。

 

 最後に、次の過去ブログ記事等を参考として掲載しておく。

音楽著作権侵害問題考~卒業ソングの名曲「記念樹」が聞かれない(1)~ - 諦観ブログ日記(2020年2月5日)

音楽著作権侵害問題考~卒業ソングの名曲「記念樹」が聞かれない(2)~ - 諦観ブログ日記(2020年2月12日)

「音楽著作権侵害騒動」の結末事例3選 - 諦観ブログ日記(2022年7月27日)

癒しのレトロな名曲を探して(13)~珠玉の名曲5選(「駅」等)を聴くと~ - 諦観ブログ日記(2023年9月4日)

 なお、天地真理さんのデヴュー曲「水色の恋」についても、「ホテルヴィクトリア」の盗作でないかとのことで訴え提起がなされ、結局のところ、共作&外国曲との話で和解著作権料折半も?)がなされたようである(※ 2)。

 デビュー曲 『♪水色の恋 』 の原曲 『♪Gran Hotel Victoria 』(2017年1月31日)

 

※ 2著作権侵害紛争の裁判に限らず民事裁判は、一般的に和解決着すると、裁判当事者から公表されない限り、その全貌が掴めない。いくら私的紛争と言えども、世間の耳目を惹く紛争はある程度公開されるのが望ましい。と言うのも、それはもはや個人間のレベルを超えたものになろうから。