今日は晴れのち曇り。
ハロインの昨夜は、月齢上の満月「ブルームーン」を見ることができた。
ところで、一昨夜の「月」と、昨夜の「満月」とで、いずれが「月齢上の満月」かを判別するのは容易であろうか。
そこで、日にち特定を明記せずに、次の写真(2枚)で両者を比べてみる。
さて、いずれが「ブルームーン」であるか、形状から区別はつきそうにもない。
上掲写真は「ブルームーン 」と「火星」であるが、一見して、この月が「ブルームーン」と分かるだろうか?
そんな「月」の比較話題を取上げた理由は、「似ているようで、似ていない等」のため、いずれが正解かを判別するのに、「困難事例有り」を指摘したかったからである。
まぁ~、次の流行歌のように「星(火星)はなんでも知っている」だろうが!(*'ω'*)
https://www.youtube.com/watch?v=rg9J7PP_yco(「星はなんでも知っている」。歌唱/平尾昌章、作詞/水島哲、作曲/津々美洋。1958年発売)
・・・のっけから、駄洒落にもならない、中途半端な話で、お粗末でした。(-_-;)
正解は、1枚目左側写真の月が「ブルームーン」である。
なお、昨夜午後11時頃の「ブルームーン」には、薄雲がかかっていた。
はじめに
今回は、従来から、ネット等で話題にされて来た、所謂「音楽のパクリ」問題について、「レトロな名曲3選」を例にして、少し考えてみたい。
つまり、「似ているようで、似ていない」or「似ていないようで、似ている」楽曲について、どう考えるべきかである。
具体的事例として取り上げる名曲は、❶アメリカン・ポップス「Sealed With A Kiss (邦題名/涙のくちづけ)」、❷同「The Sound Of Silence」、そして❸日本歌謡ポップス「夜明けのスキャット」である。
パクリ(盗作)とは
その前に、人々にネガティブな印象を与えている「パクリ」とは、どういう意味なのかを知る必要がある。
これについて、ピクシブ百科事典は、「他人のアイデアや表現を盗み取ること」「盗作に近いが、盗作は他人が作った作品を直接自分が作ったものとして発表する」のに「パクリは作品の材料のアイデアを盗む」色合いが強いとしている。
また、Weblio辞書は「俗に、盗む、騙し取る、盗用する、剽窃する、等の行為を指す語」としている。
勿論、その対象となるのは、表現物の全部(丸写し)又は一部である。
まあ~、大雑把に図式化すると「パクリ>盗作」ということになろうか?
所謂「パクリ(盗作)問題」は、法的には著作権保護法違反による刑事罰等へと波及する。そして、その有無の認定は、結局のところ、裁判所の判断(判決)により決着をみることになる。
そんな中、ネット等では安易に「パクリ」と批判する記事が散見されるようか。つまり、ネット等の記事中に、「似ているのではないだろうか?」と言った類のものさえ、「パクリ」と決めつける傾向にあるようである。
音楽著作権侵害問題について
かって、音楽著作権侵害問題で裁判となった「記念樹事件」について、次の過去記事を書いたことがある。
音楽著作権侵害問題考~卒業ソングの名曲「記念樹」が聞かれない(1)~ - 「余所(ヨソ)事でない」ブログ日記
音楽著作権侵害問題考~卒業ソングの名曲「記念樹」が聞かれない(2)~ - 「余所(ヨソ)事でない」ブログ日記
この事件は、音楽著作権侵害の有無について、下級審と上級審の判断が全く相反する結果となった事案であった。
それだけに、「似ているようで、似ていない?」、又は「似ていないようで、似ている?」という事案が、世に横行している。そのため、「パクリ」という用語が闊歩するようになったのであろう。しかし、日本で、明白な楽曲の盗作事件は少ないように思われる。
楽曲の盗作か否かの裁判の判断基準は、❶類似性と、❷依拠性が挙げられていたところ、上級審では、❶について、大部分に似たところが見られたこと、❷について、盗作された曲は当時誰もが知っている有名な曲(当人も知っていた可能性が大)であったことが重視されたのである。
それにしても、❶について、下級審と上級審とが相反する判断をしたことは、明白であるはずの「類似性」という判断基準の見方が全く異なることがあり得、見方の相違による曖昧さもあるのでないだろうか(当時は、音楽の専門家等でさえも見解が割れていた。)。加えて、❷については猶更、その認定の困難な場合もあるような気がしてならない。
以上を踏まえ、世界的に超有名であった、レトロな曲「The Sound Of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)」を中心として、その前後の年に作曲・発表された「Sealed With A Kiss (涙のくちづけ)」と「夜明けのスキャット」を比較し、所謂「パクリ問題」について少し考えてみたい。
「サウンド・オブ・サイレンス」と「涙のくちづけ」
まず、「The Sound Of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)」は、「Sealed With A Kiss (涙のくちづけ)」のメロディの一部を、パクったのでないかという素朴な疑問である。
そのために、次の(1)と(2)を聴き比べてみる。
(1)「Sealed With A Kiss 」
(邦題名「涙のくちづけ」、「キスの刻印」or「ハートにキッス」。作詞/ピーター・アデル、作曲/ゲイリー・ゲルド。1960年リリース)
❶ アメリカのポップス・グループ「The Four Voices(ザ・フォー・ボイセス)」歌唱(1960年リリース)
https://www.youtube.com/watch?v=nKGk9qg9A9k
ヒットせず。ボビー・ヴィントンに依頼するも却下。ところが、その後、以下の歌手により歌唱されて、大ヒット。
❷ アメリカの歌手「Brian Hyland (ブライアン・ハイランド)」歌唱分(1962年リリース)
https://www.youtube.com/watch?v=aN85vc8DMWQ
英米で大ヒット(ビルボード3位)するも、日本ではマイナーヒットに終わる。
❸ アメリカのポップス・ヴォーカル・トリオ「Lettermen(レターメン)」歌唱分(1969年リリース)
https://www.youtube.com/watch?v=Wbpq-zzIj0k
日本でヒット(オリコン9位)。
1969年 『涙のくちづけ』 レターメン - 港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』
❹ アメリカの歌手「Bobby Vintone(ボビー・ヴィントン)」歌唱分(1972年リリース)
https://www.youtube.com/watch?v=NS1TNQPCSuk
https://www.youtube.com/watch?v=ZvP42bkrhO4
米国・カナダでヒット(ビルボード・ホット19位。カナダ1位)。
❺ オーストラリア出身の歌手「Jason Donovan」歌唱分(1989年リリース)
https://www.youtube.com/watch?v=y-Qf2c1xr2I
大ヒット(全英1位)。
❻ ベルギー出身の歌手「Dana Winner(ダナ・ウィナー)」歌唱分(2002年のカヴァー曲収録アルバム)
https://www.youtube.com/watch?v=lLOqeZD8cq0
(2)「The Sound Of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)」
(作詞・作曲/ポール・サイモン。1964年の収録作品。1966年リリース。1968年映画「卒業」のオリジナル・サウンドトラックに再収録)
❶ アメリカのフォーク・デュオ歌手「サイモン&ガーファンクル」歌唱
https://www.youtube.com/watch?v=NAEppFUWLfc
https://www.youtube.com/watch?v=v5SztF7pPZE
なお、この曲は、大ヒット(ビルボード・ホット1位。オリコン1位)した。
聴き比べ 『サウンド・オブ・サイレンス(The Sound of Silence)』 - Flying Skynyrdのブログ
❷ 日本のシャンソン歌手「クミコ」さん歌唱分
https://www.youtube.com/watch?v=7axnVlgQwlU
以上を聴き比べしてみると、上記(2)は(1)の曲の出足し等の盛り上がり部分で似たようなメロディが使用されているようか。しかし、曲全体から受ける印象は違う。
すると、これを、明白な「パクリ」と言えるのだろうか。又、(1)の作曲者「ゲイリー・ゲルド」と「ポール・サイモン」間の「パクリ騒動」は、聞いたことがない。
「サウンド・オブ・サイレンス」と「夜明けのスキャット」
次に、下記(3)の曲が、上記(2)の「パクリ」であるとの指摘である。
そこで、(3)の曲を聴いて、上記(2)との曲と聴き比べをしてみよう。
(3)「夜明けのスキャット」
(作詞/ 山上路夫 、作曲/いずみたく、編曲/渋谷毅。1969年リリース)
「由紀さおり」さん歌唱
https://www.youtube.com/watch?v=mvssMZIwtjA
https://www.youtube.com/watch?v=3BXnaz7UrfM
この曲は、日本で大ヒット(レコード売り上げ109万枚のミリオンセラー。オリコン1位)したばかりでなく、2010年「ピンク・マルティーニ」の演奏曲にも取り入れられ、大好評を得ている。
以上の両曲を、聴き比べしてみると、似ているようにも、似ていないようにも、思われる。
この点、かって、この曲と上記(2)の曲に関して、日本で「パクリ」疑惑の指摘がなされていたようである。それは、次の「パクリ説」である。
(盗作説)
由紀さおり「夜明けのスキャット」は盗作なのに!? - 澎湖島のニガウリ日誌
しかし、これに対して、「パクリ」でないとの反対論もある。
(盗作否定の見解)
片岡義男『歌謡曲が聴こえる』(補遺): 江分利万作の生活と意見
似ている曲-由紀さおり/夜明けのスキャット&サイモン&ガーファンクル/サウンド・オブ・サイレンス | Discジャンキーズ
上記盗作否定見解の「ブログ主」さんらも言っているように、曲の出足から受ける印象は、確かに似ている。しかし、曲想全体から、明白に「パクリ」と言えるほどに、似ているかと言えば、そうでもないように思われる。
また、もし、「パクリ」であるならば、作曲者「ポール・サイモン」から、ミリオンセラーとなった日本の楽曲に対して、何等か抗議等のアクションがあったはずであろう。しかし、それは聞かれないよう。
さらに又、もし「パクリ」ならば、2010年、アメリカの超有名なジャズ・オーケストラ「ピンク・マルティーニ」がこの曲を取上げなかったであろうことも推測できよう。このことは、上記「ブログ主」さんも示唆している。
おわりに
今回、「音楽のパクリ」について、超有名であった「レトロな名曲」の3作品を取上げて、少し考えてみた。それらの作品はいずれも、大ヒットした曲である。とりわけ、「サイモン&ガーファンクル」歌唱の「The Sound Of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)」は全米1位になるほどの傑出した作品である。
しかも、新作ソニー・ウォークマン発売記念のイギリス人気投票で、歴代6位に入っている名曲(1位はクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」、3位はザ・ビートルズの「ヘイ・ジュード」)である。
“歴代で最も人気がある曲”1位は…イギリス調査 - Yahoo! JAPAN
この曲が、それより前に作曲・発表され大ヒットしていた「Sealed With A Kiss (涙のくちづけ)」のメロディの一部に似ているように思われたが、「パクリ」の話は、どこからも出て来なかったようである。
他方、日本の歌謡ポップス「夜明けのスキャット」は、「The Sound Of Silence」の「パクリ」であるとの非難がなされた。
思うに、新たなメロディ作出への限界性を考え、かつ、より優れた作品を世に出すために、多少、似たような曲があったとしても、「パクリ」としてむやみに非難するのでなく、ある程度は許容すべき風潮を醸成したいものである。非難すべきは、「看過できない程度の類似曲」というものだけに限定すべきであろう。
以上、あれこれ考えると、「夜明けのスキャット」が「The Sound Of Silence」に多少似ているからと言って、盗作の明白性(看過できないほどの類似性)がない限り、「パクリ」とむやみに非難するのは、音楽の発展・向上にとって、百害あって一利なしと考えたい。
それでなくても、音楽著作権保護期間が50年から70年に延長(しかも、起算点は著作権者の死亡時から)され、さらに「ジャスラック問題」等もあって、音楽自体が衰退の一途を辿りつつある昨今、特にそういう思いをするのである。勿論、音楽著作権者の利益保護を否定するのではない。問題は過度な徴収方法である。
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それゆえ、多少似たような曲であっても、徒に「パクリ」として非難するのではなく、「似ているような曲であるけれど、これぐらいであれば、まぁ、いっか!」「似ている曲の原曲と言われて、知名度が再認識され、リバイバル・ソングになるかも知れない。それでもって、楽曲売り上げが大きく伸びるかも!」ぐらいの、大らかな社会的許容意識が欲しいものである。
上記3曲は、いずれもが大ヒットし、「レトロな名曲」として歌い継がれているようである。それらは、言わば「Win-Winの関係」にあったのだろうか。(-_-;)
なお、これと多少関連すると思われるが、次の過去記事を書いているので、参考にしてもらえれば有難い。
どこかの曲と似たような、「名曲メロディ」2選について - 「余所(ヨソ)事でない」ブログ日記