昨日は雨のち晴れ。今日は晴れのち曇り。
- はじめに
- 安倍元首相の死去
- 安倍元首相暗殺は政治的テロか?
- 伊藤詩織氏vs.山口敬之氏の民事裁判
- 準強姦に係る刑事事件の扱い疑義
- 刑事と民事事件における「真逆の判断結果」について
- #Me Too運動の余波
- おわりに
はじめに
7月8日、ショッキングなニュースが飛び込んで来た。元首相の「安倍晋三」氏が奈良で応援演説中に凶弾に倒れたというのである。一瞬、「モリカケサクラ河井」等問題で物議をかもした御仁だけに、政治的テロと思われた。そのため、自民党は候補者に演説を取り止める指示を出したのだろうか。尤も、喪に服する意味もあっただろう。
容疑者は「山上徹也」である。彼は、旧統一教会から家族が崩壊されたことを恨みに持ち、その教会と深い関係があると思われる「安倍元首相」をターゲットにしたと言われている。しかし、いまいち腑に落ちないところもあり、その真相は今後の捜査で明らかにされるだろう。
次に、その日に飛び込んだ大ニュースは、#Me Too運動の日本版とも言うべき「詩織さん事件」の最高裁の民事裁判であった。
元TBS記者「山口敬之」氏は、これまで、合意があったとして「準強姦」の事実を断固として否認して来た。ところが、この最高裁の裁判でその否認は否定されたのである。しかし、その余波が今でも第三者に及んでいる。
なお、このニュースは安倍元首相の暗殺ニュースの陰に隠れて、ネット等でも報じることが少なかったようである。
今回は、安倍元首相の死去と、性暴力の民事裁判について、それらの事案の概略及び背景等を考えてみる。
安倍元首相の死去
7月8日午前11時半頃、安倍晋三元首相(67)が奈良市の近鉄大和西大寺駅前で応援演説中、凶弾に倒れたという、ビッグニュースが飛び込んで来た。そして、ドクターヘリで救急搬送後の午後5時3分に、奈良県立医科大学付属病院にて失血死で亡くなった。死去の発表は午後5時45分過ぎであった。
当時、安倍晋三元首相の救急搬送後は「心肺停止」と報じられていた。ところが、午後3時36分、元TBS記者「山口敬之(やまぐちのりゆき)」氏(56)がフェイスブックで「安倍元首相は亡くなったとの情報が入った」と書き込み、この投稿が拡散された。それも、情報源は「信頼できる情報筋」とのことであった。
元TBS記者、発表2時間半前に「安倍晋三元首相がお亡くなりに」 批判に反論「二重三重の確認を取った」: J-CAST ニュース【全文表示】
これに対し発表前の死去投稿への批判が寄せられ、「山口敬之」氏は、安倍元首相の近親者等からの情報であったと釈明した。
安倍元首相暗殺は政治的テロか?
安倍元首相を銃殺した「山上徹也(41)」は、「特定の宗教団体に恨みがあり、安倍元首相がこの団体と近しい関係にあると思って狙った」「政治的意味合いで狙ったのではない」等と、警察で述べている。とすると、政治的信条によるものでなさそう。政治的テロとも違う。
この言質によると、政治家一般の言論を封殺する犯行でなく、単なる政治家個人への私憤による犯行と言うことになろう。しかし、次の記事によれば、テロと一般犯罪の境界は曖昧なようである。
「テロ」と呼ぶべきか 恐怖による過剰反応が破壊する民主主義:朝日新聞デジタル
なお、特定の宗教団体とは「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)」のことである。
「統一教会と安倍元首相が親しいので狙った」という点について、親しいだけで、安倍元首相を付け狙い暗殺に及んだにしては、暗殺理由に乏しいように思える。ただし、両者の関係性が濃密であれば別であろう。
この点、統一教会は7月11日の記者会見で両者の濃密性を否定している(注1)。
山上徹也が統一教会を狙った具体的な動機は、「母親が宗教に金を払いすぎて破産した。恨みがあった」と述べているように、高校時代、家族が母親の多額の寄付によりめちゃめちゃになったからと言われている。つまり、信者である母親の家族を顧みない多額の寄付行為により家族崩壊へと至ったからである。
【独自】関係者「母は旧統一教会に献金1億円」、土地・自宅売却で破産…山上容疑者は教会トップ襲撃計画も(読売新聞) - goo ニュース
統一教会は、容疑者の母親が破綻した事実(2002年8月21日破産宣告)を把握していたそうである。
それにしても、安倍元首相が「統一教会に近いから狙った」と言うのでは、いまいち犯行動機が判然としないので、奈良地検は「山上徹也」の責任能力の有無について、「鑑定留置請求」を検討しているようである。
伊藤詩織氏vs.山口敬之氏の民事裁判
奇しくも、同日、伊藤詩織氏(33)vs.山口敬之氏(56)の、❶本訴「準強姦事件による損害賠償請求事件」と、❷反訴「名誉毀損による損害賠償請求事件」の最高裁による裁判があった。それらの結果は、いずれも上告棄却決定で終了した。つまり、裁判内容は控訴審(東京高裁)の判決どおりに決した。
裁判決着には、2017年9月「伊藤詩織」氏が東京地裁に訴え提起してから、約4年10カ月の月日を要したことになる。
上記❶は伊藤詩織氏からの約1000万円請求に対し、山口敬之氏は「誘ってきた」と性的合意を主張して請求棄却を求めたが、彼女が2015年4月にホテル出退後の知人、病院や警察に相談していたことから、「意識を失っている中で同意なく性行為を始めた」と判断し、第1審は330万円の認容、第2審は約332万円を認容した。
上記❷は山口敬之氏の1億3000万円請求に対し、第1審は名誉毀損に当たらないとしていたが、第2審はこれを覆し、「デートレイプドラッグを飲まされた」点について名誉毀損にあたるとして55万円を認容した。
「彼女はうそつき」山口氏は伊藤さん非難 外国特派員協会で会見 - YouTube
「性行為の不同意、2審も認められた」 伊藤詩織さん、判決受け - YouTube
準強姦に係る刑事事件の扱い疑義
この民事事件が始まる前、刑事事件では、2016年7月、検察庁は嫌疑不十分の理由で不起訴処分にした。その後、検察審査会で審査したところ、2017年9月に「不起訴相当」の議決がなされた。
嫌疑不十分は、起訴しても有罪を勝ち得るだけの証拠がないということであろう。これは、「証拠裁判主義」の原則から来るものである。
ただ、嫌疑者が権力者に近い存在であれば、警察・検察も全力捜査に二の足を踏むことは間違いないように思われる。
それだけに、逮捕状が発せられ、それが執行される直前の2016年6月に、これを止めた警視庁刑事部長「中村 格(いたる)」氏(現・警察庁長官/59)の行動が問題視されている(注2)。これについて、池袋暴走死傷事故で一世を風靡した「上級国民」だから逮捕されないという言説がなされていた(上級国民説 注3)。
というのも、もし逮捕されていれば十分な証拠が得られたかも知れないからである。
刑事と民事事件における「真逆の判断結果」について
刑事事件は、結局のところ検察の捜査段階で被疑者が起訴されずに終了した。これに対して、民事事件は裁判で決着をつけることになった。
つまり、「山口敬之」氏の準強姦の刑事事件は検察の捜査で不起訴処分に終わり、民事事件では準強姦による損害賠償が認容されたのである。
それでは、刑事と民事事件での判断が、例え、かたや「検察庁」、こなた「裁判所」であっても異なったのは、なぜであろう?
それは、ひとえに証拠による証明の程度問題である。つまり、刑事では合理的疑いを挟む余地のないほどの準強姦の事実が証明されるか否かに対し、民事ではそこまでの高度な証明力が必要とされないからである。
ついでに強いて言えば、検察は、現在収集している証拠からでは、準強姦事件を起訴して有罪判決を勝ち得るだけの自信がなかったのであろう。
#Me Too運動の余波
性的被害にかかる「#Me Too運動(性暴力とハラスメントとの被害経験をハッシュタグ『#Me Too』を付けて、オンライン上に投稿するキャンペイン)は、2017年アメリカ(ハーヴェイ・ワインスタイン事件)から始まり、瞬く間に全世界に広まった。日本も当然ではあった。
さらにその余波は、当事者同士(伊藤詩織氏vs.山口敬之氏)の問題から、どちらか一方に組してSNSで加担した第三者にまで紛争の火花が飛び火し、名誉毀損として訴えられ始めたのである。いわば、第三者に向けられた「二次紛争」とも言うべきものである。
例えば、「山口敬之」氏を擁護した、漫画家「はすみとしこ」氏(「枕営業大失敗」のイラストに対して、88万円の賠償命令)や、大沢昇平東大院特任准教授(「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」のTwitter投稿に対して、33万円の賠償命令)への裁判沙汰が、そのことを如実に示している。
ついでに言えば、「はすみとしこ」氏のTwitter投稿に対して、そのリツィートした男性二人も、コメントを付けなかったことから「賛同した」として、東京地裁が損害賠償を認めている。
他方、「伊藤詩織」氏を擁護した、漫画家「小林よしのり」氏や、一般市民のTwitter投稿に対しても、名誉毀損による損害賠償請求がなされている。
山口敬之氏が小林よしのり氏と小学館を訴えた裁判情報|上田24|note
永添泰子(次回期日は7月22日10時からWEB会議)山口敬之氏に名誉毀損で提訴されました。 (@packraty) / Twitter
おわりに
大きなインシデント(出来事)があった7月8日は、マガジンハウス発行の雑誌「ポパイ」によれば、「ナンパの日」とされ、語呂合わせだけでなく、七夕(7月7日)の翌日にもその謂れがあるよう。
ところが、そんな浮かれた日に「元首相暗殺」という痛ましい大事件と、「#Me Too運動」の一終着点ともいうべき最高裁の耳目を引くべき裁判があったのである。結局、後者は前者の重大性にかんがみ、ネット記事も少なかったようか。
まぁ~、最近は、過去の一時期と違い、「#Me Too運動」も下火になっていることも影響しているのであろう?
最後に、恒例のレトロな名曲(歌謡曲)を紹介し、夏の花の写真を掲載して、本記事を終える。
まず、歌謡曲は次の歌手らが歌唱している、次の2曲である
➀ 「湖東美歌」歌唱(編曲/田辺信一。オリジナル。1976年)
https://www.youtube.com/watch?v=bTuIsefudlY
② 「狩人」歌唱(編曲/船山基紀。カヴァー。1979年)
https://www.youtube.com/watch?v=IT-lEr32m4k
https://www.youtube.com/watch?v=hLdWlDAFMwg(リマスター版)
❷ 「森高千里」歌唱の「渡良瀬橋」(作詞/森高千里、作曲・編曲/斎藤英夫。1993年)
https://www.youtube.com/watch?v=hYUrBTYuhAQ
https://www.youtube.com/watch?v=8m03y--CyCE
次に、夏花はアメリカンブルーとヘメロカリスの写真(計3枚)である。
(本日撮影のアメリカンブルー)
(以上、昨夕撮影のヘメロカリス)
(注1)
安倍元首相と統一教会との関係性については、次の記事に指摘されている。
安倍晋三、統一教会との蜜月を笑顔でカミングアウト。イベント登壇&韓鶴子総裁を称賛で本性あらわ、「票とカネ」目的の歪な関係 - まぐまぐニュース!
【"統一教会"の献金などの活動を非難】紀藤正樹弁護士ら全国霊感商法対策弁護士連絡会が記者会見 - YouTube
(注2)
この不逮捕等の件について、前川喜平・元文部科学事務次官は、「山口元記者はなぜ逮捕も起訴もされなかったのか?そこには安倍政権による『刑事司法の私物化』という恐るべき疑惑が存在する。」と、東京新聞のコラムに寄稿していた。
(注3)
「上級国民の性犯罪は大甘も!」の記事
https://president.jp/articles/-/50377