諦観ブログ日記

ー Que Será, Será(ケセラセラ)ー

異邦人(アルベール・カミュの小説)から窺われる「不条理」とは?(私見)

今週のお題「読書感想文」

お題「わたしの癒やし」

 

 昨日は晴れのち曇り、一時雨。今日は晴れ。

 

 このところ熱帯夜と猛暑日が続いて、今にも熱中症にかかりそうである。昨日午後から、一時、自宅駐車場や道路の一部が浸水するほどの土砂降りの大雨が降って、多少暑さも和らいだ半日であったものの、室内温度は相変わらず高い。

 

 おまけに、目に見えない新型コロナ・ウイルス感染にも恐々としている。と言うのも、最近、都会からの見知らぬ来訪者が目立つからである。

 例を挙げると、先週に突然やって来た❶リフォーム会社訪問販売営業マンとか、❷ガス工事会社の自宅周辺道路ガス管・埋設工事案内人とかである。さらに、いつものように、❸郵便配達人や❹市役所広報誌配布人もやって来ている(いずれも、ソーシャル・ディスタンス抜きの面談又は書面の手渡し状態であった。)(>_<)

 

 熱中症については、東京23区内の死者が8月として過去最高の170人(8月24日まで)となっていること等、又、コロナ禍については、全国の感染者が6万8088人、重傷者が230人、死者が1288人(8月30日午後8時時点)となっていることからも、些細なことのようであっても、用心に用心を重ねた方が良いだろう。

東京23区の熱中症死者170人 8月では過去最多、昨年1年の死者数も超す:東京新聞 TOKYO Web

特設サイト 新型コロナウイルス 感染者数・重症者数データ|NHK

 室内にいても熱中症で死亡する人が多数である(161/170人が死亡)。又、ちょっとした油断から、コロナ禍に見舞われ、死亡することもあるだろう。

 

 閑話休題今週のお題は「読書感想文」ということである。

 そこで、かっては、読んでよく解らなかったものの、なぜか印象深い記憶がある、ノーベル文学賞受賞者・フランス人「アルベール・カミュ」の小説「異邦人」を取上げたい。

 

 その小説で特に印象深かった場面は、❶主人公「ムルソー」が亡くなったママン(母親)の葬儀で涙を流さなかったために非難されたこと、そして❷死刑判決を受けた同主人公が、ナイフを抜いたアラビア人を射殺した動機として「太陽がまぶしかった」せいにしたことである。

 

 この小説「異邦人」は不条理文学作品の一つとされている。異邦人とは主人公「ムルソー」を指している。では、なぜ、彼が「異邦人」なのであろう?それは彼自身の有する一般通常人とは異なる意識・感情や行動形態から「異邦人」として扱われているのである。

 そもそも「異邦人」とは「外国人。異国人/goo国語辞書」のことを一般的に指すが、本小説で扱われる「異邦人」は、意識・感情や行動面において、一般通常人が遵守するであろう社会倫理規範を逸脱又は無関心である者を指すものと思われる。所謂「変人」「奇人」の類であろう。それは、一言で「不条理な考え方や生き方をする人」を指そうか。

 では、その不条理とは何を言うのだろう?それは、一般的に「筋が通らないこと。道理が立たないこと。また、そのさま。」(Weblio国語辞典)を指す。

 

 以上から、果たして、主人公「ムルソー」は「異邦人」であるのかを、以下で検討してみたい。

 

(1) まず、犯罪事実について、「ムルソー」がアラビア人を射殺したことは殺人罪の構成要件該当性が認められる。それも、アラビア人がナイフを抜いてちらつかせたことが殺人の直接の動機となっている。

 その点、「ムルソー」は、殺人の動機を「太陽のせい」にした。これは、一般的には筋が通らないばかりか、道理も立たない理由である。「理由なき殺人」と同じである。

 つまり、不条理な殺人と言わなければならない。この点、正当防衛により違法性が阻却されそうにも思えるが、急迫性や手段の相当性等から、最大限に、その事情が斟酌されたとしても、過剰防衛が成立するかどうかであろう。しかし、「ムルソー」は、その点を主張すべきなのに、全く主張していない。

 ところがそれより大問題なのは、一発撃って倒れたアラビア人に対して、残りの弾4発をすべて撃っていることである。これでは、過剰防衛すら成立しそうにない。

 

 有責性を免れるためには、「ムルソー」が心神喪失等の事情がなければならないが、そうした状況は、本小説の描写からは見当たらない。

 「ムルソー」は、通常、人間誰しも有しているであろう「生存本能」を放棄していると言えようか。おそらくそれは、生存自体が不条理なものと考えていることからのコロラリーなのかも知れない。

 

(2) 次に、「ムルソー」の情状事実について、母親の葬儀で涙をみせなかったことと、太陽のせいによる理由なき殺人事件性が、「ムルソー」の有する冷血非道な人間としての人格の悪性を浮き彫りにし、その結果、死刑判決へと導かれたように思える。

 この点、「ムルソー」にしてみれば、自己のありのまま正直に生きただけで、周囲にどう思われようが、又、ギラギラと照り付ける太陽の影響もあって、素直に「太陽のせい」としただけなのかも知れない。

 実際は、アラビア人がナイフを抜きちらつかせたことで、自己の身の危険を防御するためアラビア人を殺害したはずなのに、そのことは、裁判の場で何も言わなかった。「ムルソー」にしてみれば、弁解は不要なものなのであろう。ただ、あるがままに生きて、そしてあるがままに死ぬことを所期していたようか。

   

(3) 以上からすると、「ムルソー」は、一般通常人とは相当に異なった人間(変人)であったことが判ろう。生への執着心が全くないようなのである。つまり、「異邦人=不条理人間」という図式が成り立ちそう。

とある「不条理」問題への世迷い事&「夏の歌」 - 「余所(ヨソ)事でない」ブログ日記

 

 最後に、今日、一輪咲きのバラの花「レオナルド・ダ・ヴィンチ」と、近くの電線に止まっていた「シラサギ」の各写真(合計4枚)を掲載すると共に、「ジャズ音楽の名曲を紹介して、本記事を終える。

 

❶ レオナルド・ダ・ヴィンチ

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❷ シラサギ(コサギ?)

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❸ アメリカのジャズシンガー・ソングライターHalie  Loren 」(ヘイリー・ロレン)歌唱の「A  Womon`s  Way

https://www.youtube.com/watch?v=3wgbwj9WD1g

https://www.youtube.com/watch?v=RldoPGqgZIE&list=RDRldoPGqgZIE&start_radio=1

 

(追記)

 9月1日、曇りのち晴れ。

 書き忘れたが、「異邦人」と言えば 、日本の歌姫「中森明菜」さんが唄っていた、次の2002年発売アルバム「-ZEROalbum-歌姫2」のカヴァー曲があったのを思い出した。(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=wIfRUyQHsTU

https://www.youtube.com/watch?v=ihcnuVDWvfs

 この歌で使用されている「異邦人」の意味は、「見知らぬ人。旅人(goo辞書)のようである。

 なお、この原曲は作詞・作曲・唄が「久保田早紀」さんで、1979年にリリースされて以来、144.4万枚のミリオンセラーとなった曲である。