今日は晴れ。
はじめに
今夏参院選で台風の目となり、一躍脚光を浴びている「れいわ新選組」について、次の記事は、「左派ポピュリズムの衝撃とどう向き合うか?」というタイトルで、「れいわ新選組=左派ポピュリズム政党」と決めつけている。
山本太郎、れいわ…左派ポピュリズムの衝撃とどう向き合うか?(石戸諭) - 個人 - Yahoo!ニュース
この「左派ポピュリズム」というネーミングは、日本において、世間一般的に感得される響きとして、受けが良くないようか。
他方で、「れいわ新選組」の参院選比例候補者であった「安富歩」東大教授は、「左派ポピュリスト政党でない。左派でも、ポピュリストでもない」と、次の記事で主張している。
果たして、いずれの言い分が正解なのであろうか?
そこで、今回、それら言葉の意味が曖昧模糊のようなので、それらの点を検討し、「れいわ新選組」は左派ポピュリズム政党なのか否かの点について、考えて行きたい。
「左派」とは、何っ?
社会運動や政治活動の場で、盛んに「左派(左翼)、右派(右翼)」とか、「極左、極右」とかの言葉がマスコミ等で多用されている。
現在、イデオロギー論争は終着点を見ているはずなのに、何故なのだろう?
左派の意味は、「革新的な政治団体。また、ある組織内での急進派」(精選版日本国語辞典)という。
言葉の語源は、フランス革命期の国民議会にて、議長席から見て右側を国王の権力を維持する「保守・穏健」派が、左側が国王の権力を制限する「共和・革新」派が陣取ったことから名付けられたとのことである。
最近よく目にする右派・左派 この言葉の由来と本当の意味は? │asQmii[解決!アスクミー] JIJICO
以下、次の記事を紐解き、類似概念等とも対比しながら、「左派」の意味を考えて見よう。
「革新」の対立概念として「保守」がある。そして、かっての日本社会党(現在その流れは、立憲民主党・国民民主党・社民党に受け継がれている)や共産党が「革新」政党=左派(左翼)と呼ばれた。これに対し、「保守」政党(政治的・市民的な自由主義を軽視する姿勢の強い、右派or右翼の色彩を有する特徴がある)は自民党であった。
ところが、ソ連等崩壊による「革新」の悪しきイメージ払しょくのため、革新勢力は、「リベラル」という用語を使用するようになったよう(ただし、共産党のみが「革新」を標榜)。そして、その意味は「少数派の政治的・市民的自由の尊重」が要諦とのことである。
さらに続けて、「多様な価値観に寛容で、議会制民主主義を尊重」する人々をリベラルと言うとする。
他方、保守政党は、多数派の政治的・市民的自由のみを尊重するので、リベラルとは言えないとのこと。そうすると、日本維新の会や公明党は、保守政党に入りそうか?
これに対し、「左派」は、資本主義の欠陥を指摘し、社会主義経済を指向するから、資本主義経済を擁護するリベラルと対立するという。
ところが、昨今、ややこしいことに、「リベラル左派」(左派がリベラル化)が出現したというのである。つまり、「左派」による、議会制民主主義の過程的容認や市場経済の活用の必要性の採用ということになる。
現在では、本来的ではないにしろ、右派・左派の言葉が、一事例として、「護憲か改憲かの区別」の方へ向かって、差別やレッテル張りに使用されている傾向もあろうか。
以上から考えるに、「れいわ新選組」の政党としての綱領が未だ不十分であるも、「リベラル」と言えるが、「左派」と決めつけるのは、失当でないかと思われる。
改憲を最重要課題として目指す「安倍政権」に反対しているという一言をもって、「左派」と呼んでいそうな気がしてならない。何か、「バイアス」がかかっているのだろうか?
「政党 」って?
れいわ新選組は、「政党」という実質を備えているのだろうか?
政党とは、「❶政治的主義・主張を持つものによって組織され、❷政治的利益や政策の実現のために活動し、❸政権獲得を目指す集団」(デジタル大辞泉)をいう。
上記ブログ記事で、参院選比例候補者の「安富歩」東大教授は、「れいわ新選組」は無縁者の集まりであり、「政党」ではないと言っている。
無縁集団としての「れいわ新選組」の解釈は難しいが、かってに解釈すると、組織から比較的自由であること、構成員の個性を尊重していること、子供等の社会的弱者の尊重等を掲げ、従来の政党像と異なった概念を用いているようであろう。それゆえ、従来言われている「政党」概念とは違う意味で、政党でないと言っているものと推察する。
政党は組織の強固な団体であることもあり、そこに、当然組織による締め付けは厳しいものとなろう。ほとんどの既成政党はそうである。とりわけ、公明党や自民党に至っては、血の結束に近いぐらいの緊縛があるのだろう(実際、創価学会員の野原善正候補は「村八分」になっているという)?
安富歩教授は、この点に思いをいたし、政党でないと言っているようにも思われる。
しかし、安富歩教授がいかに考えようとも、いかに、構成員の個性を尊重するあまり、組織の縛りが緩くなろうとも、又、無縁者の集まりであろうが、外形的に政党としての体裁があれば、政党なのである。
しかも、今回、公職選挙法上の政党要件も満たしている政治団体である。まだ、発足して間もないことから、政党としての実質が不十分であるということだけであろう。
たしかに、政党として異質にもなろうか。組織票も団体票も見込めない中、参院2議席を獲得したという、前代未聞のことが起こった結果と、参院選候補メンバーの急場ごしらえ等準備不足からくるものである。
消費税廃止等の政策目標を掲げ、組織の内部にはやや難点があったにせよ、それは今後の課題であり、将来への政権獲得に向けた集団であることに間違いないだろう。山本太郎代表も政権獲得を公言している。そのことから、内容的にも、上記❶~❸の要件をすべて満たしている。よって、政党の実質を備えていると考える。
「ポピュリズム(Populism)」って、何?
❶民衆の情緒的支持を基盤とする指導者が、国家主導により民族主義的政策を進める政治運動(民衆主義、人民主義)。
❷政治指導者が大衆の一面的な欲望に迎合し、大衆を操作することによって権力を維持する方法(大衆迎合主義)。
いずれの意味にしても、世間一般が受ける聞こえは宜しくない。
さらに、❸一般に、労働者・貧農・都市中間層などの人民諸階級に対する所得再分配、政治的権利の拡大を求める主義(デジタル大辞泉)の意味もあるという。
上記❶❷の意味は、古典的・本来的な典型例で あって、成熟した民主主義の現代社会では、その跋扈は困難であろう。現在、一般的には、❸の意味しかないように思える。
ポピュリズムは、歴史的に、1891年結成のアメリカ人民党(通称、ポピュリスト党)から広まった言葉である。その後、中国の毛沢東主義やアメリカのマッカーシーズムとして実践され、21世紀に入って、この言葉が広範に使用されはじめた。
ポピュリストとして、イタリアのベルルスコーニ元首相、フランスのサルコジ元大統領・マクロン大統領・ルペン極右政党党首、アメリカのトランプ大統領・サンダース上院議員がいるよう。また、日本では、小泉純一郎元首相・石原慎太郎元都知事・小池百合子都知事・橋下徹元大阪府知事が、ポピュリストと挙げられている。
典型的なポピュリストの意味に繋がる上記❶と❷と異なり、現代は、❸を含めて「大衆の支持に強く後押しされた政治活動であれば」、その主導者は、党派を超えて、何でもかんでもポピュリストと言われている面も否めない。その概念は混乱して使用されているのである。
次の記事によれば、「自分たちが、それも自分たちだけが、真の人民を代表する。」という、ポピュリストの共通言葉を紹介している。つまり、自分たち「以外」の「他のもの」たちを徹底的に排除することが前提になっているとのことである。反多元主義がポピュリズム認定の要という。
そう言えば、日本でも、「排除宣言」で名を轟かせた御仁がいたね!
【ゼロからわかる】ポピュリズムとは何か…一言でいえますか?(池田 純一) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)
以上のことから考えると、「れいわ新選組」の参院選候補者の面々を見て、今のところは、どこが「ポピュリスト」といえ、どこに「ポピュリズム」があるというのだろうか疑問である。ただし、上記❸の意味なら、考えられよう。
現在、アメリカ大統領候補のサンダース上院議員が、「ポピュリスト」と言われているが、彼は「多元主義者」だという。排除主義者でないのに、そう言われるのは、超富裕層が支配するアメリカの政治情勢に要因があろうか?つまり、超富裕層に都合の悪い良心的政治家を排除しようとするプロパガンダに過ぎないとも受け取れる。
ひょっとしたら、このような手法は、「れいわ新選組」にも当てはめられているのかもしれないね!
冒頭記事「左派ポピュリズムの衝撃とどう向き合うか?」について、一見、論が通っているように思えても、記事タイトルの意味内容が曖昧であると、多くの人の誤解を招き兼ねないように思われて仕方がない。
同記事については、「多元主義」か「排除主義」かの肝心な視点が欠落しているのが、残念極まりないのである。
おわりに
以上を検討してみて、「れいわ新選組」は、「リベラル」であって「左派」ではない政党であること、そして、ポピュリズムの点において「排外主義」を標榜していないことから「ポピュリズム」政党でもない、と考えたい。
もし、現代において、「大衆の支持に強く後押しされた政治活動」はすべてポピュリズムと定義し批判するのであるならば、およそ、組織票もない、団体票もない政治団体が政党になることは不可能となる。
つまり、組織票もない、団体票もない政治団体が、政党になり、やがて政権獲得を伺うのはすべてポピュリズムのなせる業に相違ないということになる。しかも、色眼鏡で、「左派」というスティグマ(烙印/stigma)を押されると、なおさらのことであろう。
それにしても、イデオロギー論争は終結したはずなのに、今でも相変わらず、曖昧な概念の「左派・右派」という言葉が跋扈するのに、強い違和感を禁じ得ない。
(追記1)
7月27日、晴れ後曇り。
7月24日に就任したイギリスの「ボリス・ジョンソン」首相は、庶民派だと言われている。ところが、「相当にキャラの濃い人物」のようで、アメリカのトランプ大統領とキャラクターが似ていて、「イギリスのトランプ」とも言われている。
生まれも、育ちも生粋のエリート。「ポピュリスト」の一員に加えられている。
「イギリスのトランプ」と言われる新首相ジョンソン氏 人物像は - ライブドアニュース
ジョンソン新英首相、エセ「庶民派」の危うさ(日経ビジネス) - Yahoo!ニュース
ところで、このところ、参院選後の「新党」に関する記事ばかり書いている。そして、気晴らしに、ふと玄関先に出て見ると、「百日草」の花や、電線に止まっている「ツバメ」「キジバト」が気になる。
(百日草の花に、アマガエルが!)
(電線に止まっている、ツバメとキジバト)
(追記2)
7月31日、曇り。それにしても、大変暑い。
政治学者らからの「れいわ新選組」等に対する批判?とも受け取れそうな記事に、多少違和感も!
確かに、「ポピュリズム」を、上記❸の意味で使用されるのなら、そのとおりだとしても、記事の文脈全体から透けて見えるのは、上記❶❷の意味をも内包するニュアンスのようにも?
㊀「議会制民主主義は生き残れるか」の記事
現在の欧米政治状況につき、「拡大する格差の犠牲者である彼らの声を聞くポピュリスト政党」の出現により、「議会制民主主義」が危機に陥っている。
「れいわ新選組」等も「その類の政党だと思う」と!
㊁「れいわ躍進、左派ポピュリズムの日本版」の記事
山口二郎・法政大学教授の談、「既成の政党が非正規労働者など困っている人たちの声を代表しきれていないという不満が鬱積」「れいわの躍進は欧米で台頭している左派ポピュリズムの日本版とも言える現象だと思います」と!
れいわ躍進、左派ポピュリズムの日本版 N国も無視できず〈週刊朝日〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
(追記3)
8月1日、晴れ。異常な暑さ。
大手メディア等がれいわ新選組を、盛んに「左派ポピュリズム」と称していることに対して、
㊀ れいわ新選組の山本太郎代表曰く、「人々を救うということを、ポピュリズムと言われるなら、そうです私はポピュリストですと言ってやりたいと思います」と!
㊁ テレビ朝日局員で番組コメンテーターの玉川徹氏曰く、「山本さんは弱者のポピュリズム、橋下徹さんは強者のポピュリズムという感じがする」と!
この点、思うに、まあ、山本太郎代表は上記❸の意味でのポピュリズムを指し、橋下徹氏は上記❶❷類のポピュリズムを指しているのだろうか?
れいわ・山本太郎代表「私はポピュリストです」。羽鳥慎一モーニングショーで“左派ポピュリズム“との指摘に宣言。(ハフポスト日本版) - Yahoo!ニュース
(追記4)
8月7日、曇り。
千葉大学の水島治郎教授は、ポピュリズム(大衆迎合主義)を「人民の立場から既成政治やエリートを批判する運動」と捉えていると!
下記の記事では、「偏狭なナショナリズム」を「右派ポピュリズム」と捉えているようだが、「左派・右派」という言葉を使用するも、左派とは何ぞやとか、「左派ポピュリズム」は如何に、とかの明確な言及はない。
世界のポピュリズム、勢い続く? 庶民の不満根深く(NIKKEI STYLE) - Yahoo!ニュース
(追記5)
8月28日。雨。
「小池都知事が大衆を扇動した豊洲騒動が、交通渋滞など五輪の円滑な運営に大きなマイナスになっている」(舛添要一・前都知事)と!
(追記6)
10月4日、晴れ。
「文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は、ポピュリストなのか。」の記事
次の要件すべてに当て嵌まっていれば、ポピュリストと!
❶組分け(例えば、前ベネズエラ「チャペス大統領」曰く、「チャペス=国民」)。❷自分たちは良い~自分たちだけが国民。❸犠牲者コスプレ=執権後にも犠牲者のように振る舞う。❹永久執権を夢見る。❺反エリート主義=ポピュリストは既得権に反対する。❻後見主義=国家が(個人の生活の)責任を負う。
【時視各角】ポピュリズムの罠に掛かった大韓民国(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース